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| ブルーアトラス物語/第一章・出会い | ||||||||||||||
隆一がこのマンションに引っ越して来てから3年目が経っていた。 この春、末娘が短大を卒業して子育ても終わり「さーて、ようやく好きな絵でもまた描きはじめようかな〜」と隆一は考えていた。 末娘の短大が終わったら自分の好きなことを老後のためにやり始めようかと以前から思い描いていた。すでに50歳を迎えた平凡な初老の男たちが当たり前のように考えることである。 五月の爽やかな風が新緑の木々の間を心地よく、静かに流れている、そんな日曜の朝である。隆一は廃品回収の新聞を重そうにして階段を下りていた。隆一は3階に住んでいたのでエレベーターはあまり利用しない。不機嫌そうな顔で両手に新聞の束を持って外の廃品回収置場にポンと置いた。後ろから「おはようございます〜」同じ棟に住んでいる…名前が分からない…マンションの住民は隣近所の付き合いが薄い。隣りに住んでる人とめったに会うこともない。…でも、隆一はニコッと「おはようございます〜」と挨拶を交わした。 エレベーターの前に掲示板がある。色々な連絡の紙が整然と貼られていた。管理組合の連絡だったり、町内会の連絡だったり。あまり興味のない隆一はそこの場所に立ち止まって眺めることはまずない。「ん〜、なんだ〜、バンド募集? ふ〜ん」なんとなく見たA4版の素人が作ったポスター。それでもカラーで「バンドやりませんか」と訴えていた。 部屋に戻った隆一は、「バンドやりませんかって、ポスター貼ってあったよ」とゴロンとソファに横になっていた娘の真保に話し掛けた。「へぇ〜、やってみたら。昔やってたんでしょ?」あまり興味のなさそうにではあったが、答えた。真保は小学からずーっとブラスバンドで活躍していたので、音楽のことは隆一は足元にもおよばない。でも真保が小さいとき父親がギターを弾きながら歌っていた姿は真保が音楽の道を選ぶきっかけにはなっていた。と、隆一は勝手に思っていた。 |
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