ブルーアトラス物語/第三章・猛特訓!    
             
 

 隆一にとっては悪夢のような初練習から二週間がたっていた。隆一のこの二週間の特訓を知っているバンドメンバーは誰もいない。手ぶらでノコノコ出掛けた前回の練習とは違っていた。

 肩にギターを引っかけ、右手にはアンプ、左手には楽譜の入った袋をもって、今回も市民センターの和室の部屋に入っていった。もう長尾さんはベースギターのチューニングを終えて今か今かと待っていた。山田さんもドラムのセッティングをしながら「どうも、平井さん。あや、アンプ買ったのすか〜」と言いながら今日も元気は良さそうだった。「は〜、小っちゃいけど、とりあえず…。マイアンプです。」隣りにいた長尾さんも、ほーっという顔で、チューニングマシーンを手渡してくれた。あの初日にてこずったあのマシーンだ。

 少しして権藤さん、坂口さんも「こんにちは〜」といいながら入ってきた。

 隆一はもうひとつ秘策を考えていた。バンドスコアだ。暗譜する自信はないい。楽譜はゴチャゴチャと見づらいし、6ページにもまたがっている。隆一は自分流に楽譜を書き直したのだ。小節ごとに大きくコードだけを書いて、イントロからエンディングまで見開きの2ページに。これだと楽譜台におくと見易くてなんとか曲の流れに追っていけそうな気がした。

 「チューニングはいい〜すか?」リーダーの長尾さんが声をかけた。「んじゃー、パイプラインやりますか」

 当然のように権藤さんがリードギター担当が暗黙の了解になっていた。問題は坂口さんと隆一のサイドギターだ。「どうしようね〜」隆一はスコアを見ながらCDを何度も何度も聞いたお陰で、パイプラインの構成がよく分かるまでになっていた。ベンチャーズにはあまり興味のない坂口さんは「分かんないっす〜」と少し投げやり。「じゃ、坂口さん、ここをジャ〜ンと流すように弾いてくれますか。そうビヨ〜ンと…あと、ここからは…」隆一はまるでリーダーにでもなったように、坂口さんに説明をしだした。

   
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